京都の近代建築を考える会

近代建築を考える会です

宮川美髪館

第13回市民が選ぶ文化財
「宮川美髪館 」

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宮川美髪館

所在地  京都市下京区油小路通綾小路上る石井筒町
竣工年  昭和2年(1927年)
構造規模 木造2階建
設計、施工者 不詳
所有者  宮川雅次
選考理由
京都の中心、下京の鉾町から少し西、油小路と綾小路の角に一度目にしたら忘れられない、ずっと記憶に残る可愛い理容店、宮川美髪館があります。
腰までの濃い茶色のタイルの上部に黄土色のタイルを貼り、四隅や窓、玄関周りはアイボリーの額縁でアクセントを付け、玄関上に右書きで「美髪館」の看板がテラコッタで埋め込まれています。
屋根は鋼板葺きの陸屋根で、軒先にはエンタプラチュアとしての装飾(帯状装飾)が施されるなど、木造ですがあくまで洋館であることを主張する長方形の箱。
今でも町家が多く連なる街の角地にあって、この建物の存在感は際立っています。
建てられたのは昭和2年、施工者は不明です。
間口5間、奥行1間半と極端に扁平な建物で、1階を店舗、2階を住居として使われており、台所等の水回りは北側の附属する平屋に納め、その階上を物干台にしています。
1階の店舗内部も建築当時の内装がよく残されており、床や壁のタイル。
鏡や木製の脇棚など、昭和初期にはさぞハイカラであったであろう当時の様子をそのままに使い続けておられます。
この建物のように、市内の通りの角地には理容店が多く見られます。
これは理容店が小規模な土地で営業できる業態であり、敷地が小さくなりがちな通りの角地に、他の業種に比べ営業しやすいことがあったと思われます。
また落語の「浮世床」にもあるように、庶民のたまり場、情報源としての立地の便もあるかも知れません。
宮川美髪館はそのような理容店の洋館建ての典型として今も営業されています。
所有者の宮川雅次氏はこの建物にひとしおの愛着をもたれ、陸屋根の銅板の葺替に際しても鋼板で葺かれるなど、できるだけ現状を維持し、この建物を大切に守ってこられました。
このように、「宮川美髪館」は昭和初期から変わらぬ佇まいを残し、街の風景として市民に愛され、親しまれています。
何よりこの建物が所有者の愛着とともに使われ続けていることは、私たち近代建築を愛する市民が「市民が選ぶ文化財」として顕彰するにふさわしい建築であると考え、ここに選定し、顕彰いたします。
2016年6月4日  京都の近代建築を考える会