京都の近代建築を考える会

近代建築を考える会です

紫明会館

第10回市民が選ぶ文化財
「紫明会館」

f:id:kyo-kindai-archi:20190225141249j:plain
紫明会館

所在地  京都市北区小山南大野町1番地
竣工年  昭和7年(1932年)
構造規模 鉄筋コンクリート造3階建
設 計、施 工 者 清 水 組
所有者  特定非営利活動法人リアル・リンク京都

選考理由
南禅寺水路閣から京都市街を北へ大きく廻り、やがて堀川に合流する疎水分線はその末端で紫明通として道幅を大きく広げ、中央に公園のような植樹帯を設ける、京都では珍しい景観となっています。
その紫明通の北側にスパニッシュの瀟洒な装いを凝らした「紫明会館」が建っています。
この建物は昭和7年京都府師範学校、現在の京都教育大学の創立50周年を記念し、教育、研修の場を社会に提供することを目的として同校同窓会が建設しました。
「紫明会館」という名称もこの時、一般募集により命名されました。
設計、施工は清水組。工事監督として京都府の営繕技師、十河安雄が委嘱されていますが、十河が設計にどれくらい関わったかは不明です。
荒いベージュの塗り壁に箱を積み重ねたような素気ないほどの外観ですが、スペイン瓦を要所に使い、アーチ窓でお洒落にまとめています。
竣工当時、1階は食堂とビリヤード室、2階は和室、談話室、3階は講堂とされていましたが、現在も1階の一部以外はほとんど改造されず、内部の装飾的要素は少ないものの、アールデコの雰囲気をよく伝えています。
「紫明会館」は長年、京都教育大学同窓会の同窓会館であるとともに、設立の趣旨のとおり市民の文化活動の拠点として永く使われ、親しまれてきましたが、国の機構改革によって同窓会による維持管理ができなくなり、建物自体の存続が危ぶまれていました。
今年になり、非営利活動法人リアル・リンク京都がこの建物を引き受けられ、デイサービス事業を中心に、市民への貸しスペースとして引き続き利用されることになりました。
外観、内装ともできるだけ手を加えずに使われており、近代建築を使い続けるための、ひとつのモデルケースとなるものです。
このように、「紫明会館」は昭和初期から変わらぬ佇まいを残し、街の風景として市民に記憶され、親しまれています。
そして、この建物への愛着が、次の所有者に受け渡され、使われ続けていることは、私たち近代建築を愛する市民が「市民が選ぶ文化財」として顕彰するにふさわしい建築であり、ここに選定致します。
2013年6月22日  京都の近代建築を考える会