京都の近代建築を考える会

近代建築を考える会です

先斗町歌舞練場

第8回市民が選ぶ文化財
先斗町歌舞練場」

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先斗町歌舞練場

所在地  京都市中京区先斗町通三条下る橋下町130番外
竣工年  1927年(昭和2年
構造規模 鉄筋コンクリート造地上4階地下1階
設計者  大林組(木村得三郎)
施工者  大林組
所有者  先斗町お茶屋営業組合

選考理由
三条大橋の欄干にもたれ、南に向かって西側を眺めると、先斗町の古い町並みが見渡せます。
ところどころビル化されたとは言え、まだまだ甍の屋根が続く京都らしい風景の一つとして、観光写真、ポスターにも数多く取り上げられています。
その低い町屋の家並の北端近くに一際目立つ古風なビル、茶色のスクラッチタイルの地肌におおぶりの窓や、ベランダの周囲を白い石材で装飾した華麗な印象の「先斗町歌舞練場」は、京都市民なら誰でも見覚えがある建物です。
また、先斗町の狭い通りから「鴨川踊り」見物に胸ふくらませて正面玄関をくぐった方も多いと思います。そして、先斗町を歩く観光客も伝統の町家とともに写真を撮る風景がこの建物が、伝統の景観の中に溶け込んでその一部となっていることを証明しています。
先斗町歌舞練場」はその名のとおり、京都の伝統を体現する五花街のひとつ先斗町の組合によって、舞妓さん、芸者さんたちの技芸の稽古や発表の場として昭和2(1927)年に建てられました。
設計は大林組の木村得三郎。大阪松竹座を設計した劇場建築の名手と謳われる人です。
1922年にF.L.ライトが帝国ホテルを建て、いわゆるライト風のデザインがもてはやされ、スクラッチタイルを用いて水平線を強調するなど、当時の最先端を行きながら、軒の瓦や八角形の窓に日本的なデザインを巧みに取り入れています。
鴨川から眺めた華麗な印象に対して、先斗町側の正面は同じ素材ながら玄関以外の開口部を無くして狭い通りに壁のように控え目に存在し、それでいて腰の部分をタイルで装飾して花街らしい「粋」を表現しています。
内部は戦後改装されましたが、装飾タイルも残っており、劇場独特の華やいだ雰囲気を醸し出しています。
このように、街の風景として市民のみならず観光客にも記憶される貴重な近代建築を愛着を持って維持、管理に努力されておられる「先斗町歌舞練場」は、私たち近代建築を愛する市民が「市民が選ぶ文化財」として顕彰するにふさわしい建築であり、ここに第8回『市民が選ぶ文化財』に選定致します。

2011年6月8日  京都の近代建築を考える会